特集・ウイズコロナ時代をどう生きるか【学ぶ】
新たな暮らしのヒント.01
3密3活。3密さけて3活しよう!
松田 道雄(生涯学習論)
尚絅学院大学教授・長野県シニア大学地域プロデュース専門コース合同授業講師
家で小さな画面だけ見て過ごしているの?
3密3活。3密さけて3活しよう!
3活とは? 生存、情報、創造。
活動の1つ目、生存とは?
生きるための活動。
食べ物を買う。食べる。歯を磨く。洗濯する。掃除をする。体を動かす。風呂に入る。親しい人と話す。寝る。・・・これら、ウイルスと戦う免疫力をつける心がけをしながら毎日行っている、生きるための活動をあらためてふりかえると、一人のようで私は一人では生きていないことに気づかされる。
スーパーの店員や配送する人たちがいるおかげで食料を買うことができる。
病気になっても治療してくれる人たちがいるおかげで回復することができる。
次世代からお金を借りるおかげで今の困窮が救われるかもしれない。
そして、いつか誰しも人生が終わる時には自分より若い世代が葬儀の世話をしてくれることになるだろう。
だから、人に感謝し、人を思いやり、人のためになろうとすることも、生きるための活動であり、それを親から子に、次の世代へと態度で伝えていくことも生きるための活動だ。家庭内の不満や暴力や虐待、多くの社会問題は、それを自覚できていない大人がおこす問題だ。相手が何に不満があるのかをくみ取り、親は子の思いをくみ取り、ともに助け合い、生きていること自体に感謝できる活動が生きるための活動だ。
我々の生存、生きるための活動は、自分だけを考える利己的な活動であってはならない。
我々は、人とともに生きるということを、この時間、深く自覚する機会になる。
専門コース授業風景@長野県立図書館
活動の2つ目、情報とは?
知る活動。
目で情報を得る人にとっては、スマホやパソコンやテレビの画面が情報を得る窓口だ。
インターネットのおかげで、一人部屋で暮らしていても、自分のまちのことも世界のことも同じように知ることができるし、わからないことは検索すれば教えてくれるし、身近な友だちとも遠くの人とも同じように会話することができるし、仕事の会議をすることも授業を受けるのも映画をみるのも同じように画面に向かって行うことができる。
あらためてふりかえると、現在の私たちの暮らしは何と画面を見る時間が多いことか気づかされる。情報をテレビやインターネットに頼らざるを得ない今、情報の送り手はそれを見る者がどれくらい画面を見ざるを得ないのかを配慮することなく情報を送り、あなたがまじめにそれらを見ようとするなら、起きている間ひたすら画面を見続けなくてはならなくなる。さらに、文書作成やメールなどの作業もすべてパソコンの画面を通して行っている。
頭はぼっとし、注意散漫になり、目だけ疲れ、何と不健全な暮らし方か。
世界を知り、社会や人とつながるのにネットから映される画面を見ることは必要不可欠だからこそ、必要以上に画面を見続けることを律することもまた必要不可欠だろう。
我々の生身の体は、デジタルではない。今まで、リアルな目の前の人との会話や食事がいかに人生を豊かにさせてくれているのか、逆に、リアルな会議がいかにオンラインでもすむような退屈なことをしていたのか、気づかせられる。
我々は、リアルとデジタルの両生的な生き方を、この時間、深く自覚する機会になる。
専門コース授業風景@長野県立図書館
活動の3つ目、創造とは?
能動的に何かをつくり出す活動。
日頃の生活から離れ、一人でいる時間が増えた今こそ、じっくり部屋の中で日頃できないことに没頭してみることは、人生の中でも充実した時間になり、その後のあなたの人生の財産になるだろうし、人類の未来社会の財産にもなり得ることを生み出せるかもしれない。
孤独は、創造の時間になる。
あらためてふりかえると、人類の歴史は、孤独な時間に生まれた創造の恩恵を受けていることがたくさんあることに気づく。
ヨーロッパでペストが大流行した時、イギリスのケンブリッジ大学の学生だったアイザック・ニュートンは、ペストによって大学が閉鎖されたため、約1年半故郷に戻って暮らした。「創造的休暇」と言われるその期間に、微分積分、光学、万有引力の「ニュートンの3大業績」が着想された。
多くのさまざまな発明発見や創造的な革新は、協調性がないと非難されたりしながらも人間関係や雑務にとらわれずに没頭して取り組んだ人々の産物だ。今は、だれもが多くの人との協調性を必要としない環境(家の中)にいる。人を気にせず創造活動に取り組むことができる。
いつもスマホの画面を見ないと気がすまなくなっている現代人が代償として失ったのは、一つのことに没頭する時間と集中力だ。しかし、今、それを体験できるチャンスなのだ。
何かをつくり出すことには、生みの苦しみもあることも、それを乗り越えたあとの充実感も体験することができるだろう。だれでも創造的な人間になることができる。そうでないと思う人は、それまでそのような時間をつくらなかっただけなのだ。
一冊の本をじっくり読んでみる。
物語を書いてみる。
部屋のインテリアを変えてみる。
お母さんから料理を教えてもらってつくってみる。
室内での運動のしかたを工夫してみる。
プログラミングを学んでみる。
不便なことを探して、解決のアイデアを考える。
これからの社会のあり方を想像してみる。
変化に対応するため、今の仕事をさまざまな角度からとらえ直してみる。
第2・第3の仕事を考える。
そして、自分自身をふりかえり、生き方を考える。・・・
受け身の活動だけでなく、自分から何か能動的に取り組むこと。それがのちに誰かから喜ばれることであれば、それこそが、この世に生きている喜びになるだろう。
今、家にいることも貴重な生きている人生の時間であり、家にいるならではの創造活動をすることができるのだ。
我々は、生きるとは創造することであることを、この時間、深く自覚する機会になる。
あなたは、1日24時間の中で、この3活をどのように活かすだろうか?
この時間の充実が、これからのあなたの人生と人類社会の未来につながっていく。
2020年4月寄稿