信州版 人生ニモウサク劇場

このページでは シニア層の社会参加や 高齢者を支える 様々な取組をご紹介します。

  • シニア事例

伊那市西春近の「村岡にっこり会」の皆さんが、10年続けてきたクルミ拾いの活動を紹介します。

地域グルミで「憩いの場」づくり(伊那市)

クルミ割りの日、皆で手分けをして
 7月、開け放たれた村岡会所で、10数人が〈クルミ割り〉の作業をしていました。暑い中、ガスコンロで煎ったクルミを、手製のクルミ割り器で割り、抜いて選別、パックに詰めます。94歳の坪木さんが、慣れた手つきでもくもくとクルミを抜いていました。お茶の時間には、手作りのお茶請けを盛ったお皿が配られ、皆笑顔で久しぶりのおしゃべりを楽しみました。「最初は面白半分だったよね。」「みんな勤めに出るようになって、隣近所でも、なかなか顔を合わせなくなったからね。」「ここにきておしゃべりして、スッキリしてね。」
地域グルミで「憩いの場」づくり(伊那市)の画像1
最高齢の坪木さん、クルミ抜きはお手のもの
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おいしい手作りのお茶請けと一緒におしゃべりがはずみます
「私たちも、何かはじめたいね」
 村岡の女性たちは、平成22年7月、JA上伊那生活班(女性組合員主体の活動)の研修の帰りに、長野市でおやきなどを提供するお店に立ち寄りました。もともとJAの女性組合員も立ち上げに関わったお店だそうで、「私たちも、何かはじめたいね」と夢が広がりました。活動資金も、食品加工施設もない中で、家の周りにあるオニグルミに目がとまりました。「この辺にいっぱい落ちてるじゃん、あれ拾ったらどう?ただでできるし!」

 オニグルミは今から4,50年前まで、農家の女性たちの貴重な収入源でした。「皆がお勤めをするようになってから、拾わなくなったよね。私たちの世代では、収入のために(拾う)ってことはなかったよね。」と唐木 佳世子さん(73歳)
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土手にある大きなオニグルミの木
「落とす人、拾う人、大勢の力をお貸しください。」
 9月の半ばを過ぎると、オニグルミが実を落とし始めます。それからは、外出時はレジ袋が必需品になりました。勤めから帰ると、クルミ拾いに出かけます。「もったいない」と思いつつ車で踏みつぶしていたクルミも、もうつぶせません。「私たち、クルミの(を探す)目になってるね」と笑いました。拾って洗って天日干し、煎って割って抜いて選別まで、とても手間のかかる仕事です。
 クルミの木は川っぷちにあることが多く、川に網を張って急な土手からクルミを落とす作業や、じゃぶじゃぶ洗う作業など、男性でなければできない仕事もありました。そこで、村岡生活班だよりで、地域の方にクルミの作業への参加を呼びかけました。「落とす人、拾う人、大勢の力をお貸しください。」「どのくらいの収入になるかわかりませんが、その大切な収入を積み重ねながら、地域の人たちが協力し合い、無理のない楽しい仕事づくりをしていけたら」と。
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刈込ばさみを改造したくるみ割り器が活躍します
「みんなが集まれる憩いの場」に
 最初は、昼の1時から夜の10時までの、都合のつく時間に、集会所へ足を運んでもらい、作業することにしました。こうして生活班の活動に地域住民、男性も加わり、『村岡にっこり会』が誕生しました。まず、新そば祭りの会場でクルミを販売しました。またクルミを使った五平餅会を開催した時には40戸中、大人34人、子ども19人が集まりました。こうして年配の方から3か月の赤ちゃんまで、「みんなで集まれる憩いの場」になっていきました。「クルミ割りの日は、お義母さんがみんなと一緒にいてくれるから、安心して勤めに行ける。」と言った人もいました。クルミ割りを通して、何かの時にはみんなで助け合える関係を続けてきました。できたクルミは直売所では売らず、農協祭や女性祭りの会場の他、つながりのある方に販売してきました。「一人の力は小さくても、みんなで集まると何かできる。仲間がいるからできたんだよね。」
 当初、利益を目的とはしませんでしたが、年に一回、お年玉として還元したり、東日本大震災の義援金として送ったり、使わせてもらっている集会所にお礼としてお金を収めたりしてきました。
 今までは年間5、6回していた集まりも、今年はコロナの影響で集まることも難しく、クルミの売れ口も少なくなりました。また男の人の手がないと作業が難しいことや、高齢化の問題もあり、そろそろ潮時かな、という声も出ています。「クルミがしんどければ何か…みんなの張り合いになって、世の中の役に立つようなことをしていきたいね」と話しています。

(伊那支部シニア活動推進コーディネーター 藤井佳代)
地域グルミで「憩いの場」づくり(伊那市)の画像1
作業をする場は憩いの場

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