信州版 人生ニモウサク劇場

このページでは シニア層の社会参加や 高齢者を支える 様々な取組をご紹介します。

  • シニア事例

当センターには、事業目標に賛同し取組みを支える「賛助会員制度」がある。身近な地域で会員同士の交流を図り、思い思いのカタチで社会参加活動を行っている。
人生100年時代。
いくつになっても安心して参加できる(出かける)場があり、そこには仲間がいる。
互いの思いを大切にしながら学び合う漢詩グループの様子を紹介します。

人生100年時代 ニューフェイスは90歳(長野市)

学びに終わりはない
長野地区賛助会「長野漢詩会」グループの例会を訪れた。
発足は平成2年。立上げ当初のメンバーは今や1名となり、会員の高齢化も進む。
とはいえ、活動する教室の雰囲気はいたって明るく、若々しい。

漢詩には、短い詩のなかに風景と作者の心情や人生訓などが盛り込まれている。
それをリズミカルな歌として読み上げる。
先人の知恵に学び、現在の自分の人生をより良く生きるためのヒントがそこにあるという。

「最近、新たな会員が増えた」とグループ長から紹介があった。
「はじめまして、こんにちは」
優しく微笑み返されたのは、黒い僧衣姿の高齢男性。
ニューフェイスは御年90歳。善光寺の村上長臈と知る。
たまげた…とはこのことだ。
漢詩のテキストを手に「まだまだ学びが足りませんから」と村上長臈は学ぶ意欲を見せる。
人生100年時代 ニューフェイスは90歳(長野市)の画像1
NHKラジオ講座のテキストが教科書
1つのテーブルで学び合う 一つひとつを理解し喜び合う時間
社会人の学びには「リカレント教育」と「生涯学習」がある。
調べると、前者は「仕事に活かす」ことが目的であるのに対し、後者は「人生をより豊かにする」こととある。
シニア世代が学び直す理由は、前者よりも、教養を深め学ぶこと自体にやりがいを見出し、時間を共にする仲間を作りたい人が多いという。

村上長臈に「学び直す」理由を尋ねた。

昭和8年の新潟生まれ。6歳で両親を亡くし、親戚のお寺に養子として迎えられる。
僧侶になるため故郷を離れ、単身12歳で比叡山の門をたたき学校へ通い始める。
時代は戦後直後。深く学びたかったものの、お経の教科書さえなかった頃。
「近頃は便利な世の中で、お経の読み下しも出回っており、思想の真の意味を理解せずとも読み上げることができる。それもまた時代の流れか」と村上長臈はつぶやく。

「戦後の貧しい時代に育った今、あらためて基礎から学びたいと思った。死ぬまで一生懸命あたまに詰め込んでおきたい」
漢詩の意味をかみしめ、ひとつひとつを理解し、門弟や後世のために遺偈(ゆいげ)※を書き上げることで、次世代に真理を残し伝えることも動機の一つだという。

※遺偈(ゆいげ):禅僧が末期 (まつご) に臨んで門弟や後世のためにのこす偈(げ)。
 偈(げ)は仏語。経典中で、詩句の形式をとり、教理や仏・菩薩 (ぼさつ) をほめたたえた言葉。4字、5字または7字をもって1句とし、4句から成るものが多い。頌。(goo辞書より)
人生100年時代 ニューフェイスは90歳(長野市)の画像1
「漢詩は面倒だけど面白いね」と語り合う講師の寺田さんと村上長臈
1つのテーブルを講師と生徒で囲み、平等な立場で一緒になって漢詩を読み上げる。
講師の寺田さんは1つ年下の89歳。
テキストを手に、洗練された講師の解説に熱心に耳を傾け、手を挙げて疑問を問う生徒の皆さん。
そのやり取りに「学びには年齢も立場も関係ない」という言葉が思い出された。
人生100年時代 ニューフェイスは90歳(長野市)の画像1
昔から愛用は「こくご」のノート
人生100年時代 ニューフェイスは90歳(長野市)の画像2
ああだこうだと平場となって学び合う生徒のみなさん
秀でた詩はリズムがいい。人生もリズム豊かに
村上長臈との会話には、「リズム」という言葉が度々聞かれる。

「秀でた詩はリズムがいい」と漢詩の醍醐味を語り、健康の秘訣を尋ねると「美味しいものをいただき、よく学び、よく動くこと。生活のリズムを大切にしている」と話す。
これからの夢の話では「知人の誘いから60歳を過ぎてマラソンを始めた。コロナ前まで十数回出場してきたホノルルマラソンに再び挑戦したいものだねぇ」と笑い、人生に目標があることが生きるリズムにもなると抱負を語った。

コロナ禍で乱れたリズムも、長い人生からするとたいした狂いでもなく、いつも前を向き、鮮な気持ちでリズム豊かにたくましく生きる、今日はそんな教えをいただいた気がする。


              長野支部シニア活動推進コーディネーター 齊藤 むつみ

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