「今年は開花が早くて、もう9回裏って感じだよ」
4月の下旬、“花咲じいさんクラブ”の北澤さんに電話するとそんな声が返ってきた。例年5月の連休中に花桃の見ごろを迎える上田市武石の“余里(より)の一里花桃”。ここ数年は開花時期が徐々に早り、今年は連休前に満開を迎えてしまったとのことだった。
連休スタートの前日、余里の集落へ入るとまだ行き交う車もまばらで、それでも地元の軽トラに交じって県外ナンバーがぽつぽつと通り過ぎていきます。昨年11月に長野大学を会場に開催された『信州発ボランティア・地域活動フォーラム』では、地元の地域活動の事例として北澤さんにご協力いただいた。10数年前、地域で何か取り組みを始めたいと考え、当時の“花いっぱい運動”をヒントに集落の一軒にあった一本の花桃から苗を育てて地域に植える活動がはじまったことや、集落の約60戸に3枚ずつ配布したPR用の絵はがき180枚が、今や『世界中でいちばんきれいな二週間』と自負する山里に数万人が訪れるほどの賑わいへ広がったことなど、地元大学生も交えた分科会で花桃の取組について教えていただいた。
今年は北澤さんのアイディアで、地元の大学生にボランティアを募り、連休中ではあったがシャトルバスの整理などに一人が参加した。始めて余里を訪れた大学生さんだったが、余里のみなさんにはあたたかく受け入れていただき、貴重な経験になったとこのとだった。住民にとってはあたりまえでも、視点が変われば、そのあたりまえが“宝物”に映る地域の良さもある。きっと新しい風が余里に吹くきっかけになるはずです。
ちょうど昼時、集落の蕎麦屋に立ち寄った。この季節に限って地元の方々が地元で育てた蕎麦粉で蕎麦を打っている。御品書は“蕎麦”、ひとつ。だが、侮るなかれ、美味なのです。小雨も上がり、陽光が照らす山肌が眩しい。明日から連休スタート。今年の余里で人々を出迎えるのは、湧き上がる鮮やかな新緑と、谷間に響くカエルの大合唱です。
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期間中に合わせてオープンするカフェ。
花桃の季節に開くお蕎麦屋さん。
雨上がりの花桃の絨毯。
ゴールデンウィークを待つ静かな余里でした。