社協の玄関を入ると、ボランティア相談室の受付さんがにこやかに出迎えてくれた。笑顔に添えた「一杯お茶でもどうですか」のひとことで気持ちがほぐれてきます。
現役の医師だった頃、ドクターとしての仕事だけでは、患者の満足度に応えられないのではないか?、と感じていたという羽入さん。患者さんをよりよい方向へ導くには患者さん自身の声に耳を傾けることが大切。ならば、その糸口となるために、とボランティア相談室を思いついた。自分にできることで地域に貢献したいと考えたのである。
だが、退職後、はたして地域に参画できるだろうか、という不安も抱いていた。現役の頃、とかく医者は難しいことを言って地域でも煙たがられている、と感じていたからだ。そんな“つぶやき”に耳を傾け、想いを形につなげてくれたのは地元の同級生だった。「つぶやくことは大事ですね」。
ボランティア相談室の取組で大切にしているのは、病院の立場ではなく、その人の立場。自分自身も同じ村に生きるヒト。だから、同じ目線で向き合いたい。ボランティア相談室は、いわば交通整理をするところ。別のところへつなぐ必要もあるから、この活動をはじめるにあたり、地域の医療機関へも挨拶まわりをした。そして、相談室の取組に賛同して受付に協力していただけるスタッフも、優しく相談室へとつなぐ大切なワンクッション、いわば“縁側”のような存在である。
この日も高齢の男性が相談室を訪れていた。ゆっくりと時間をかけて相談者の声を傾聴し穏やかに対応する姿勢が、相談室の空気を優しくしている。ボランティア相談室は安心につながる村民の居場所。人と人がゆるやかにつながる“縁側”なのです。
退職後、地域に入っていけるか不安だった、と話す羽入さん。
「お茶でもいかが?」
穏やかなボランティア相談室でした。