商店街の往来からビルの階段を上ると賑やかな雰囲気が感じられます。室内には準備に慌ただしいスタッフさんたちの姿。テーブルに置かれた小さなチョークボードには「はぐみへようこそ」の文字。散歩コースの途中に立ち寄った高齢のご夫婦がコーヒーを飲みながらスタッフさんと言葉を交わしています。「病院の先生だと専門過ぎるから、こういうところだともう少し広い話が話せてうれしい」。
「地域の保健室“はぐみ”」は、地元の有志が商店街の空き店舗を活用して開いた“お休み処”(*)を会場に、佐久総合病院地域ケア科のスタッフが健康の相談に加えて暮らしのちょっとしたことにも寄り添う取り組みです。地域とのつながりについて構想約1年。「やりながら考えていくのもあっていい」と今年の4月から“はぐみ”はスタートしました。
“はぐみ”の意味を尋ねるとスタッフさんの表情がにわかにほころびます。“はぐみ”に込めた想いはふたつ。ひとつは一方的な取り組みではなく、地域と一緒にみんなで育みたいという想い。そして、英語の"hug"(抱きしめる=ハグ)にかけて、地域のみんなを包み込むような場にしたい。いずれは地域のボランティアにも関わってほしいとのこと。サロンといえば高齢者の集いの場を連想するが、“はぐみ”が求めているのは様々な世代が交流する場。だから、子育て中の方や子どもにも来てほしい。他人だから話せることもあるし、子どもたちの「コイバナ(恋話)だってかまわないんです!」。
「計画するのが苦手で・・・」と笑うスタッフさんだが、“とりあえずやってみる”という言葉が心強く響きます。病院とは別だから足も運べるし話せることもある。そういう“はぐみ”の取り組みから臨床へフィードバックできるものもあるはず。地元の活性化につながるよう地域の方々の声を聞きながらやっていきたいとのことでした。
(*)お休み処『ベルフラワー』・・・地元有志「うすだ美図」の方々が気軽に休める場所として佐久市臼田地区の商店街に開設した空き店舗を活用したスペース。
商店街のビルの2階「お休み処」が“はぐみ”の会場です。
ちょっとした優しい心遣い。「お休み処」に並ぶテーブルは地元高校生が制作したものです。
散歩中に立ち寄られた方も。「いろんな施設があるけれど・・・」
身近に話せる“はぐみ”でした。