時を刻む想い

長野市

 路肩の雪を踏み越えながら店内に入ると、日差しの明るい室内に赤と白の椅子が並べられていました。かまど炊きのごはんでつくるおにぎりや地元で打ったうどんがご馳走の『かまどカフェ小春日和』(*)。長野市、旧豊野町の市街地の一角、かつてこの場所には『春日時計店』という一軒の時計屋さんが建っていました。まだ機械式の時計が当たり前だった頃、店内では修理に訪れた地元の障がい者施設で暮らす方々が畳に上がりお茶をいただく姿も見られました。

 時は流れ、時計店のご夫婦も高齢となり店をたたむ時を迎えました。その際、時計店から地元の障がい者施設へ申し出がありました。地域との関係を大切にする施設にこの場所を使ってほしい、と。そうした想いがつながり、時計店は障がい者の就労を支援するカフェへと生まれ変わりました。

 今では心やすまる居場所として地域に根づく『かまどカフェ小春日和』。お店の案内にはこのように書かれていました。
−「小春日和」は利用者・地域の方々にとって、柔らかな光が降り注ぐ穏やかなひだまりのような場所になることを目指して命名いたしました。「小春日和」は多くの皆様の心休まる場所として、新たな時を刻んでいきたいと思っています。どうぞお気軽にお立ち寄りください。

 『かまどカフェ小春日和』のネーミングには奇遇にもかつての時計店の名前が入っています。窓の外の雪解けを待つ空を眺めながら名物の“かまどプリン”をいただきました。時計の修理を待つあいだの楽しいおしゃべりが聞こえてくるような小春日和の午後でした。

(*)『かまどカフェ小春日和』・・・昭和37年に社会福祉法人長野県社会福祉事業団が長野県内初の知的障がい者の入所施設として旧豊野町に設置した『水内荘』のグループ施設として平成24年4月に開設した障がい者就労移行支援事業所「小春日和」のカフェ。


「修理中」と貼られた柱時計が昔の面影を伝えています。


名物!手作り「かまどプリン」


一膳ずつ手書きでこしらえたお箸でおもてなし。


「かまど」印がトレードマーク。いつしか小春日和のぬくもりも懐かしい季節を迎えるかまどカフェです。



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