とある住宅街。通りから少し入ると民家の一室を改装したカフェがあります。見慣れた玄関を入ると茶葉を焙じた香が出迎えてくれました。案内された客室には、陽の光があふれるオープンデッキテラスが窓ガラスの向こうに広がり、その先の庭木の枝には、小鳥が次々と飛んできては、羽ばたいています。いつか体が鈍くなってきたときのために、と室内をバリアフリーに改装して、オープンデッキを庭先にしつらえた。すると、訪れた友人がここでお茶を飲みたい、と言ったのがそもそもの始まりとのことでした。
出てくる料理はどれもひと手間かけて、おいしい工夫がいっぱいでした。おすすめのおやきは以前からずっと趣味で作り続けていたもの。オーナーの女性は「好きでやってきたことが無駄ではなかったと実感しています」と、お料理を出しながら話してくれました。
デザートのケーキは娘さん、そして、コーヒーは旦那さんがご担当。コーヒーポットを手に「いらっしゃいませ」と姿を見せると、手際よく豆を挽いて、丁寧にお湯をドリッパーへ注いで、「どうかな?」と最後のテイスティングは奥さんの役目です。
調度品の数々は、スプーンのひとつまで、時間をかけて集めてきたもの。お客の数を増やさないのは、無理をせずに自分のペースで楽しんでいるから。ご本人すら「まさかこういう展開になるとは思ってもみなかった」という奥さんは、それでも「好きだから続けられる」と話します。「続けられるうちは・・・」と、ひと品、ひと品、にこやかにご馳走していただきました。庭の枝垂桜が咲くころには、小鳥たちで賑やかなオープンデッキになるはずです。
明るいオープンデッキテラスです。
おしゃれなテーブルクロスも手作りです。
工夫いっぱいのお料理が続きます。
ご自慢のおやき。
コーヒーカップはお好みで。
猫のワインボトルはお水のデカンタ代わりです。
丁寧なお料理の数々。
小鳥の羽ばたく音が室内にも届きます。