信州版 人生ニモウサク劇場

このページでは シニア層の社会参加や 高齢者を支える 様々な取組をご紹介します。

  • シニア事例

「男の料理教室」の受講をきっかけに、自ら男性の居場所づくりに取り組む事例を紹介します。

男の料理教室(伊那市美篶公民館)

はじまりは、公民館講座から
 ゴーヤ、ナス、パプリカ、トマト、豚肉、小あじ…調理台の上の食材を横目に見ながら、エプロンをつけ、身支度を整えます。月に一度の「男の料理教室」。3時の開始時刻に合わせて、男性たちが集まり始めました。そもそものきっかけは、10年程前の美篶地区区長会長 中島誠さんが、勤労者福祉センターで行われた「男の料理教室」に参加したこと。「美篶でもやってみては…」と当時の公民館長 赤羽仁さん(80)や、前館長 中村和徳さん(82)(お二人とも現在も会員として活動中)に相談しました。2008年、伊那市美篶公民館の建て替えに伴い、調理室の設備、器具等を整え、開館と同時に「男の料理教室」講座がスタートしました。講師は地元に住む元農協生活指導員の酒井さつき先生。旬の食材を利用した彩り豊かで栄養バランスのいいメニューを作り、指導してくださいます。
男の料理教室(伊那市美篶公民館)の画像1
「せっかくなら一杯やりたいね。」
 当初は午前10時開始でしたが、「せっかくなら一杯やりたいね。」と開始時刻を午後3時に変更し、アルコールは各自が持ち寄ることとしました。結果的に、毎月一度は顔を合わせ、みんなで調理をし、試食を兼ねて一杯やりながらの会食会となっています。講座開始から3年後には、参加者による自主運営クラブとなり、8人だった会員数は末広がりに増え、現在は23名の大所帯となりました。「男の料理教室、いいらしいよ。」と口コミで評判が広がっているそうです。参加者は退職した市内の70代が中心。「住んでいる地区も、年も、仕事もバラバラだけど、ここに集まって、一緒に料理してね、楽しいよ。」と赤羽さん。
 先生から一通りの説明を受けた後、グループに分かれ、いざ調理開始。今日のメニューは「ナスの肉巻き」「小魚の南蛮サラダ」「ゴーヤの胡麻和え」「ピリ辛麹ダレ」「トマトご飯」、さらに、赤羽さんから差し入れのあった立派なねぎを、焼きネギにします。特に打ち合わせをするわけでもなく、各々が自分のやりたいものに手を出すような形で淡々と調理は進んでいきます。
 「バットってなんだい。」「(料理は)おもしろいよ。」「私お得意のゴマスリ。」「料理の完成と片付けが同時に終わらないと気持ち悪いんだよね。」…一人では作らないような料理も、みんなとなら楽しく作れます。一時間程で調理台は片付き、一人分ずつきれいに盛り付けられたお皿が並べられ、彩り鮮やかな食卓が完成しました。各々が缶ビールや日本酒を取り出して着席します。そして乾杯!
男の料理教室(伊那市美篶公民館)の画像1
真剣そのものです
料理から広がる仲間の輪
 毎月集まり、一緒に料理してきた男性たちは、それぞれのくらしぶりや、得意なことも心得ているようで、農作業のコツから、みんなで行った旅行の思い出、区の話題から世界の話題まで話は弾みます。最近でこそ近場(県内)になりましたが、毎年1回、バスで出かける一泊旅行も続けています。花見や忘年会も恒例行事となりました。料理を通じ、交流を楽しむ親睦の場になっているようです。
 「家ではそんなに作らないけどね。」と苦笑いする方もいれば、「たまには孫にも作ってやるんだ。」「ここにきて、片栗粉と酢の使い方を知ったんだよ。」という方も。家族の方から、先生に「洗い物をしてくれるようになったよ。」「こないだは、○○を作ってくれたよ。」と反響もあるようです。参加者からの質問に穏やかに対応してくださる先生も「最初はね、結構疲れたの、私自身が。でも今じゃ、皆さん手際よく作れるようになりましたよね。」と教えてくれました。始めた頃は、包丁の使い方や、大さじ、小さじでのはかり方も知らない初心者がいましたが、今では段取りを考えながら調理をするほどに、上達してきたそうです。
 最初の講座から参加し、現在会長を務めている橋爪弥六さん(85)は、「まず、みんなで話ができるのがいい。これも一つの生きがいづくり。仲間づくり、健康づくりにも貢献していると思う。これからは男性も台所に立つ時代だからね。私自身、朝の味噌汁は全部作るようになった。そして食器の片づけはくせになった。台所が散らかってると気になるのえ。」と話してくれました。
男の料理教室(伊那市美篶公民館)の画像1
乾杯!
ありがとう、を伝えたい
 11年目となった今年、活動10周年を迎えた記念にと、6月の父の日には、家族や友人を招いて料理をふるまいました。日頃の感謝を込めて五平餅、豚汁、餃子、春巻き、そばなどを調理したそうです。「おいしそうに食べてくれてうれしかった。」「普段家族が食事を作ってくれるありがたみを感じる。」と語る笑顔がまぶしかったです。食べることは、生きること。みんなで作ってみんなで食べる時間の積み重ねが、地域の笑顔につながっているように感じました。
(藤井佳代 伊那支部シニア活動推進コーディネーター 2019.09)
男の料理教室(伊那市美篶公民館)の画像1
全員でパチリ!

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